アレルギー Allergy
|免疫とは?
自分の体を守るために、まず <自己(自分自身)> と <非自己(自分以外)> の判別・認識を行います。体外から侵入する <非自己(自分以外)>(細菌・ウイルス・がんなど)を攻撃・排除し自己を守る機能が免疫です。体外から侵入してくるものを<抗原> として認識します。その抗原を攻撃するために、体内に<抗体> を産生します。
|アレルギーとは?
アレルギーとは体外から入ってきた 抗原(細菌・ウイルス・がん細胞・花粉・ダニ・ほこり・食べ物など) を攻撃・排除するのための免疫反応が過剰に起き、病状として現れるものをいいます。過剰な免疫反応の原因となる花粉などを、アレルゲン と呼びます。
代表的なアレルギー疾患
- アトピー性皮膚炎
- アレルギー性鼻炎
- アレルギー性結膜炎
- 花粉症
- アレルギー性胃腸炎
- 気管支喘息
- 小児気管支喘息
- 食物アレルギー
- 薬物アレルギー
- アトピー性皮膚炎
- じんま疹
アレルギー疾患と自己免疫疾患の違い
アレルギー疾患 外部からの抗原(非自己)に対し、過剰な免疫反応が起こる疾患
自己免疫疾患 自己の体を抗原として、自己抗体が産生され免疫反応が起こる疾患
特定の臓器や部位の障害、炎症をもたらしたり、全身性の症状を呈する場合がある。
膠原病(関節リウマチ・全身エリテマトーデス・IgA腎症など)・バセドウ病・円形脱毛症
アレルギーの原因
アレルギーの原因はいまだ完全には解明されていません。しかし現在生活習慣病などと同じ、複数の遺伝子が関与する多因子遺伝性疾患 の可能性が示唆されています。また環境的要因もかなり関与していると考えられています。
アレルギーの原因
1.複数遺伝子が関与するアレルギー体質+アレルゲン暴露 ⇒ アレルギー発症
- アレルギー疾患と診断された人の血縁者には、アレルギー疾患が多い
2.環境的要素(抗原に対する過剰な曝露)
- スギ花粉の増加⇒スギ花粉症患者増加
- 気密性が高い住宅・屋内⇒ダニの増加⇒ハウスダスト・ダニアレルギー増加
衛星仮説
乳幼児期に細菌などが少ない過剰に清潔な環境にいると将来的にはアレルギー疾患になりやすいと予想されています。
|アレルギーの仕組みと関与する遺伝子
アレルゲン
+
IgE抗体 ⇒肥満細胞からケミカルメディエイター放出 ⇒アレルギー反応
+
肥満細胞(Mast Cell)
上記のアレルギー反応のうち、免疫グロブリンE(IgE)が多く存在するとアレルギー反応が起きやすくなります。リンパ球のなかの、Th2の作用が強いと、このIgEが多く産生されることになります。
白血球 ⇒ リンパ球 ⇒ T細胞 ⇒ Th1細胞・Th2細胞
Th1 細胞 IL‐2・INF-γ などを産生
Th2 細胞 IL‐3・IL‐4・IL‐5 などを産生
ヒトの免疫反応はTh1とTh2のバランスの上に成り立っていますが、アレルギー疾患の人は Th2>Th1 となっています。結果的にアレルゲンが入ってくるとTh2由来のサイトカインは、B細胞を活性化させ、そのアレルゲンに対する免疫グロブリンE(IgE)を過剰に産生します。現在アレルギーに関与する遺伝子を見つけだす研究が世界中で行われていて、どの遺伝子がアレルギー体質に関与しているのかが明らかになり始めました。
アレルギーの分類
アレルギーは、その発生機序により大きく I〜 V 型に分類されます。これを クームス分類 といいます。
|クームス分類(アレルギーのタイプ)
肥満細胞から放出される物質がいたずらするタイプのアレルギーです。
免疫グロブリンIgEが肥満細胞(マスト細胞)や好塩基球という白血球に結合し、そこに抗原が結合するとこれらの細胞がヒスタミン・セロトニンなどのケミカルメディエイター(生理活性物質)を放出します。
アレルゲン
+
IgE抗体⇒ ケミカルメディエイター放出⇒ 血管拡張・血管透過性亢進⇒ 症状発現
+
肥満細胞(Mast Cell)
血管拡張や血管透過性亢進などが起こり、浮腫(むくみ)・掻痒(かゆみ)などの症状が出現します。抗原が体内に入るとすぐに生じ、即時型過敏症 と呼ばれています。
代表的な疾患
- じんま疹
- PIE症候群
- 食物アレルギー
- 花粉症
- アレルギー性鼻炎
- 気管支喘息
- アトピー性皮膚炎
- アナフィラキシーショック
生命の危険があるアナフィラキシーショック
即時型過敏症の反応が激しく全身性のものをアナフィラキシーと呼びます。この種のアレルギー症状は、10分前後で現れてくる。蜂に刺された際の毒素が原因にもなります。更に急速な血圧低下によりショック状態を呈したものをアナフィラキシーショックという。意識障害や心肺停止を来たし救急でも蘇生の対象になるケースもあります。
自分で自分を攻撃してしまうタイプのアレルギーです。自分の細胞上にある抗原に対し、自分の抗体である免疫グロブリンIgGが結合します。それを認識した白血球が自分自身の細胞を破壊するアレルギー反応です。II型アレルギーの有無は、クームス試験などの検査によって調べます。
代表的な疾患
- 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)
- 不適合輸血
- 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
- 悪性貧血
- リウマチ熱
- グッドパスチャー症候群
- 重症筋無力症
- 橋本病
- 円形脱毛症
- ウイルス性肝炎(B型肝炎やC型肝炎)
- ペニシリンアレルギー
ウイルス性肝炎(B型肝炎やC型肝炎)ではウイルスを体内から除去しようとする結果、肝細胞が破壊されるため症状が出現します
免疫複合体というものが、臓器・組織にダメージを与えるタイプのアレルギーです。
免疫反応により、 免疫複合体(抗原+抗体+補体) が形成される。これが血流に乗って流れた先で、周囲の組織を傷害するアレルギー反応です。アレルギー症状は、2〜8時間で、発赤や浮腫となって現れます。
- アルサス型反応
免疫複合体の傷害する部位が限局的な部位にとどまる反応(過敏性肺臓炎など)
- 血 清 病
全身に行きわたる反応(全身性エリテマトーデス・溶血性連鎖球菌感染後糸球体腎炎など)
代表的な疾患
- 血清病
- 全身性エリテマトーデス(ループス腎炎)
- 急性糸球体腎炎
- 関節リウマチ
- 過敏性肺臓炎
- リウマチ性肺炎
- 多発性動脈炎
- アレルギー性血管炎
- シェーグレン症候群
体外から侵入した抗原に対し特定の白血球が反応するタイプのアレルギーです。
抗原と特異的に反応する感作T細胞によって起こります。抗原と反応した感作T細胞から、マクロファージを活性化する因子などの様々なケミカルメディエイター(生理活性物質)が遊離し、周囲の組織傷害を起こします。
IV型アレルギーの皮内反応は、24〜48時間後、発赤・硬結となって現れる。
遅延化型過敏症と呼ばれる理由
アレルギーの反応部位にリンパ球が集簇・増殖・活性化するため時間を要します。このため遅延型過敏症と呼ばれています。他のタイプが全て 抗原・抗体・補体 が関与する液性免疫であるのに対し、IV型アレルギーだけは白血球の反応が関与する細胞性免疫です。
代表的な疾患
- 接触性皮膚炎(ウルシかぶれなど)
- ツベルクリン反応
- 薬物アレルギー
- 金属アレルギー
- 移植免疫
- 腫瘍免疫
- シェーグレン症候群
- 感染アレルギー
- 薬剤性肺炎
- ギラン・バレー症候群
IV型アレルギーの責任免疫細胞による分類(遅延型過敏症の細分化)
IVa型 Th1細胞とマクロファージ (ツベルクリン反応・接触性皮膚炎)
IVb型 Th2細胞と好酸球 (気管支喘息・アレルギー性鼻炎・蛋白誘発性腸炎)
IVc型 CD8+T細胞 (接触性皮膚炎)
IVd型 T細胞と好中球 (ベーチェット病)
レセプター(受容体)に対する自己抗体が産生され、その自己抗体がリガンドと同様に受容体を刺激してすることで、細胞から物質が分泌され続けるために起こるアレルギーです。基本的にはII型アレルギーと同じであり、レセプター刺激性という点だけが異なります。
代表的疾患 バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
アレルギーの検査と診断
|アレルギー疾患のアプローチ
アレルギー疾患の鑑別のための問診には次の項目が重要となります。
- アレルゲン曝露から発症までの時間経過
- 症状の持続時間
- 全身性の症状か局所性のみなのか
- 既往歴や家族歴があるのか
もしアレルギー疾患であれば、I型アレルギーかそれ以外(非I型アレルギー II〜V型)かを区別すると診断しやすくなります。
I型アレルギーは即時型アレルギーと呼ばれ、アレルゲン曝露をしてから5分から90分以内に発症することが多いです。重症例のアナフィラキシーショックにはアドレナリンの大腿前外側部の筋注が推奨されています。
|アレルギー疾患を調べる検査
アレルギー疾患を調べるための検査としては
アレルギー・アトピー体質の重症度の評価をします。
TARCは白血球走化作用を持つケモカインの一種で、過剰産生されるとTh2細胞を病変局所に引き寄せ、IgE抗体の産生や好酸球の活性化が起こり、アレルギー炎症反応を惹起すると考えられています。特にアトピー性皮膚炎において特異性がみられ、重症になるほど著明に上昇し、軽快に伴い減少します。TARCの測定は、アトピー性皮膚炎の病態を客観的に数値化します。病勢を反映して変動するため、重症度判定や治療効果判定にも使われます。
検査材料:血清
測定方法:ELISA
基準値:単位(pg/ml)
- 小児(6〜12ヶ月):1367未満
- 小児(1〜2歳):998未満
- 小児(2歳以上):743未満
- 成人:450未満
上記の正常値を超えているとアレルギー・アトピー体質と診断できます。またTARCの数値が高い程重症と判断できます。
RAST radioallergosorbent test (放射性アレルゲン吸着試験)
個々のアレルゲンに対してのIgE測定
RIST radioimmunosorbent test (放射性免疫吸着試験)
血清中の総IgE測定・アトピーの重症度判定
これらの検査は血液中に存在するダニや花粉などに対するIgEの量を測定します。IgEがアレルゲンと反応すると、血液中の肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンが放出されます。この反応が鼻の粘膜・皮膚・気管支に起こると、アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎・気管支喘息を発症するのです。RAST法とは血液中のIgE抗体値を測定し、アトピー性皮膚炎の誘因として疑わしい抗原(アレルゲン)と血清を付き合わせ、実際にアレルギー反応の起こる物質を絞り込む事のできる検査です。主に、花粉・卵・動物のふけ・牛乳・ダニ・ハウスダストなどを検査します。数値が高い程そのアレルゲンに感作され、アレルギー反応が起こりやすいと言えます。一方RISTでは、血液中の全てのIgEの量を定量します。一般的にアレルギーの重症度と比例致します。
院長のひとり言 RISTの成人正常値は170以下ですが、1000を超えている患者様が来院されたことがあります。かわいそうですが、外見的にもかなりのアトピー性皮膚炎にお悩みで、気管支喘息・アレルギー性鼻炎・花粉症なども併発しておりました。この検査は3歳未満の場合は、アレルゲンとなる物質の特定はしにくいのです。 3歳をすぎてから再度検査をお勧め致します。。
プリックテストは <スクラッチテスト> とも呼ばれる試験法です。テスト開始前に、候補となるアレルゲ(ダニ・ハウスダスト・卵・杉花粉など)を溶かした液体(抗原液)を用意します。前腕屈側の皮膚をアルコール綿で清拭し乾燥後に、皮膚の複数の箇所にわずかに血液がにじむ程度に注射針や木綿針などを刺してから、準備しておいたアレルゲンを含んだ抗原液をそれぞれの場所に1滴ずつ滴下します。1〜2分したら、脱脂綿で抗原液を混ざらないようにして吸い取ります。
15〜20分後に、抗原液を滴下した場所ごとに、反応の強さ、膨疹や発赤の大きさを測定します。特定のアレルゲンの抗原液を滴下した場所での発赤や膨疹の大きさなどから、どのアレルゲンが原因となっているか判定します。
発赤15mm以上の場合・4〜7mm以上の場合に該当アレルゲンに対して陽性と判定
メリット
簡便である
テスト自体によるショックなどの全身症状を起こす危険も少ない
ディメリット
皮内テストより感度は劣る
食物アレルギーの原因となる食物の同定を行う検査です。食物アレルギーが出現したが、その食物が原因なのかを調査します。主に小児の患者様に対し行い、医師が近傍に付き添います。アレルギー反応が遅く出現する可能性もあるので1泊入院で行う場合もあります。
リンパ球刺激試験は、薬物アレルギーなどの原因を調べる方法です。薬物アレルギー患者などの血液から、単核球を取り出し、食物から取り出した抗原とともに培養し、抗原によって活性化されるTリンパ球が存在することを確認します。リンパ球の増殖率で検出する方法です。
- 抗原を作用させない状態を100%
- 培養後に181%以上で陽性と判定
- 遅延型アレルギーの反応
IV型アレルギー(遅延型過敏症)を調べるための検査です。髪の毛を染める(Coloring)前によく施行されています。
|アレルギー疾患の治療
- 原因抗原(アレルゲン)の回避と除去
- 抗アレルギー剤の使用(内服・外用など)
|アレルギー疾患の合併
気管支喘息と副鼻腔炎といったようにアレルギー性疾患はよく合併します。特に呼吸器系のアレルギー性疾患は合併率が非常に高く、one airway one disease という考え方が提唱されています。喘息と副鼻腔炎を同時に治療することで双方の治療効果が高まります。
田島クリニック
TEL 045(264)8332
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1F Etoile Yamashita, 118-1 Yamashita -Cho, Naka-ku, Yokohama, 231-0023
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