横浜・馬車道の総合診療クリニック

脂質異常症

|脂質異常症とは?

 

脂質異常症とは、血液中の

  • LDLコレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)が増加
  •  

  • HDLコレステロールが減少

脂質のバランスが崩れる病気です。放置しておくと血管の動脈硬化が進行し、やがて心筋梗塞や脳卒中などの深刻な病気が引き起こされることになります。

 

 

院長の独り言  脂質異常症という病名についてですが、これは以前高脂血症と呼ばれていた状態と同じです。HDLコレステロールが減少してHDLコレステロールとなってもリスクファクターになります。これが脂血症という名と矛盾するため、最近は脂質異常症と呼ばれています。


コレステロール値の高い方は全国で約3660万人、中性脂肪値の高い方は約4000万人いると言われています。ライフスタイルとは無関係に遺伝的原因でコレステロール値が高い「家族性高コレステロール血症」の方も500人に1人の割合でみられます。

脂質異常症の分類

コレステロールや中性脂肪などは <脂質>ですから、そのままでは血液に溶けません。コレステロールもトリグリセリドも水に溶けないので、特殊なたんぱく質(アポたんぱく)に付着して血液中を運ばれています。このコレステロールやトリグリセリドとアポたんぱくの複合体を <リポたんぱく>といいます。水と相性の良いたんぱく質と一緒に <リポたんぱく> という粒子のかたちで血液中に溶け込み、全身に運ばれます。

 

 リポ蛋白にはいくつかの種類があり運んでいる成分が異なります。比重の低い方から順に

カイロミクロン       中性脂肪(トリグリセライド) > コレステロール

     

VLDL(超低比重リポたんぱく)中性脂肪(トリグリセライド) > コレステロール

 

LDL(低比重リポたんぱく)  中性脂肪(トリグリセライド) = コレステロール

  

HDL(高比重リポたんぱく)  中性脂肪(トリグリセライド) < コレステロール

 

などに分類されています。コレステロールには善玉と悪玉(あくだま)があるといわれますが、コレステロールに違いがあるのではなく、どのリポ蛋白によって運ばれているのかの違いによるものです。

 

3度のアメリカ留学・多くの海外経験を持つ院長が横浜で暮らす患者様に贈る総合診療クリニック

悪玉コレステロール(低比重リポたんぱく)

 

リポたんぱくのうち、「LDLコレステロール」(低比重リポたんぱく)は、肝臓でつくられたコレステロールを体内の細胞へ運ぶ役割があります。「LDLコレステロール」が過剰になると血管壁に取り込まれて蓄積し、血管の壁に必要以上にコレステロールがたまり、動脈硬化を進行させる要因となるため、「悪玉」と呼ばれています。

 

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善玉コレステロール(高比重リポたんぱく)

 

「HDLコレステロール」(高比重リポたんぱく)は、いろいろな臓器で使いきれずに余ったコレステロールを肝臓へ運ぶ役割があります。「HDLコレステロール」は、血管や組織に蓄積したコレステロールを引き抜いて運ぶリポ蛋白なので、余分なコレステロールを回収するため、「善玉」と呼ばれています。

 

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中性脂肪(トリグリセリド)
主にVLDL(低比重リポたんぱく)によって運ばれています。

 

 血中のLDLコレステロールやトリグリセリドが増加すると動脈硬化が起こりやすくなります。特に家族性高脂血症では起こす危険が非常に高いことが知られています。また先に述べたように、HDLコレステロールは少ないほうが動脈硬化を起こしやすくなります。

 

 

院長の独り言  悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やすことが、
        動脈硬化の予防・改善につながるのですね。


脂質異常症の原因

一般的には

 

1.高カロリー ・ 高脂肪の食事
2.運動不足

 

などの生活習慣が一番多い原因です。

 

3.遺伝性の脂質異常症

 

も知られています。なかでも家族性高コレステロール血症は日本人では500人に1人の高い頻度でみられる遺伝性の疾患です。そのほかにも家族性複合型高脂血症、家族性III型高脂血症などの遺伝性高脂血症があります。遺伝性の低HDL血症もありますが、極めてまれですので一般には心配する必要はありません。

脂質異常症の症状

多くの場合、症状はないので、血液検査で初めてわかることがほとんどです。

 

家族性高コレステロール血症では

 

1.アキレス腱肥厚
2.腱黄色腫   (手の甲・肘・膝の腱にできる硬い盛り上がり)
3.眼瞼黄色腫  (まぶたにできる黄色い斑点状の盛り上がり)
4.角膜輪     (黒目の周囲にできる白い輪)

 

 特にアキレス腱肥厚は最も多くみられる症状で、アキレス腱の厚みが1cm以上あって血中コレステロール値の高い場合は、家族性高コレステロール血症である可能性が高いと考えられます。
家族性III型高脂血症でも典型的な場合は、腱黄色腫や手掌(しゅしょう)線状黄色腫(手筋が黄色く盛り上がる)ができます。

脂質異常症の診断

|脂質の正常値

 

血液検査で血中のコレステロール、トリグリセリド、HDLコレステロールの値を測定します。朝食前の空腹時に採血します。総コレステロール・善玉コレステロール・悪玉コレステロール・中性脂肪の正常値は

 

総コレステロール     120 - 219 mg/dl
中 性 脂 肪      30 - 149 mg/dl
善玉コレステロール    40 - 99 mg/dl
悪玉コレステロール    70 - 139 mg/dl

 

とされています。

 

|脂質異常症の診断基準

 

空腹時の血液中の脂質が

 

@高LDLコレステロール血症 LDLコレステロール≧140mg/dL

 

A低HDLコレステロール血症 HDLコレステロール<40mg/dL

 

B高トリグリセライド血症 トリグリセライド≧150mg/dL

 

とされています。

 

|LDLコレステロールの計算式(Friedewald[フリードワルド]の式)

 

以下の数式から患者様の各種脂質を算定できます

総コレステロール = HDLコレステロール + LDLコレステロール + 中性脂肪/5

(空腹時採血 ・ 中性脂肪〔トリグリセライド〕値が400mg/dL以下の場合)

 

例えば検診結果で

 

総コレステロール  250mg/dl
善玉コレステロール 40mg/dl
中性脂肪      200mg/dl

 

の場合、悪玉コレステロール(LDL) = 総コレステロール - 善玉コレステロール - 中性脂肪/5
                  = 250 - 40 - (200/5) = 160

 

となり正常値を上回り脂質異常症の診断となります。

 

 

院長の独り言  悪玉/善玉 比率 (LH Ratio) 2.0以下の患者様は動脈硬化による合併症が少ないとされています。脂質全て正常範囲でもこの比率が高い患者様は要注意です! 上記の例ですと LDL/HDL = 160/40 = 4.0 となり、目標値2.0の2倍まで上昇していますので治療の対象になります。つまり悪玉コレステロール高値 ・ 善玉コレステロール低値の傾向です


脂質異常症の治療

脂質異常症を放置しておくと動脈硬化を増悪させ、色々な合併症を引き起こします。つまり

脂質異常症を治療する目的は <動脈硬化の予防> です!

 

治療方針としては、他の成人病(メタボリックシンドローム)と同様以下の4つのジャンルがあります

生活療法 ・ 運動療法 ・ 食事療法 ・ 薬物療法

 

|生活療法
脂質異常症の原因の多くは生活習慣なので、その改善が第一です

 

規則正しい生活・規則正しい食事時間

高脂質食品の摂取・過食を控える

深夜の食事を避ける

定期的に有酸素運動を行う

禁煙  喫煙は脂質異常症と相乗して動脈硬化のリスクファクターとなります

 

 

院長の独り言 タバコは <百害あって一利なし> ぜひ禁煙に励んでくださいね。
        つまり生活療法はメタボリックシンドローム共通ということですね!


 

|食事療法

 

脂質の正常化とともに動脈硬化の危険因子である糖尿病、高血圧、肥満の治療にもなります。

 

  • 患者様自身の総エネルギーを知りましょう
  • 栄養素バランスを適正化しましょう
  • 日常の生活強度に合った食事をしましょう

 

総エネルギー量算出方法

 

総エネルギー量 (kcal) = 標準体重 (kg) × 生活活動強度指数(kcal)

 

標準体重算出方法

 

標準体重 = 身長(m) × 身長(m) × 22

 

生活活動強度指数(kcal)
  • 軽労働(主婦・デスクワーク):25 - 30 kcal
  • 中労働(製造・販売業・飲食店):30 - 35 kcal
  • 重労働(建築業・農業・漁業):35 - 40 kcal

 

<例> 身長 170 cm 男性 事務職のA氏 の場合

 

標準体重 = 1.7 × 1.7 × 22 = 63.58 Kg
総エネルギー量 63.58 Kg × 30 Kcal = 1907.4 Kcal

 

食事の単位計算 : 1単位 = 80 kcal (ご飯 1/2杯 (50g) 1単位)
上記のデスクワークの多い成人男性では、1500kcal〜1600kcal(約20単位)ということになります。

  • 日本における平均身長でのBMI基礎代謝量 男子 1450 kcal 女子 1210 kcal
  • 軽労働(主婦・デスクワーク)男子 1630-1950 kcal 女子 1390-1670 kcal
  • 中労働(製造・販売業・飲食店)男子 1950-2280 kcal 女子 167 -1950 kcal
  • 重労働(建築業・農業・漁業)男子 2280-2600 kcal 女子: 1950-2230 kcal

<日本の平均身長  男性 171.65 cm 女性 158.60 cm>

 

更に以下の点に注意して食事なさってみてください。

 

ポイント1 毎日、いろいろな食品をとり混ぜて、バランスよく摂取する
ポイント2 アルコール、甘いものは控えめにする
ポイント3 食物繊維をとる
ポイント4 1日3食きちんと食べる

 

コレステロール値を下げる食品

青背の魚(まぐろ・さば・いわし・さんま・しゃけ)・大豆製品(豆腐・納豆等) 適量の植物油(オリーブ油・コーン油・なたね油・ゴマ油)・海藻類野菜など

 

コレステロール値を上げる食品

豚肉・牛肉の脂肪部分乳製品(チーズ・生クリーム・バター・牛乳・マヨネーズ等)・卵黄魚介類(うなぎ・いか・うに・魚卵(すじこ・たらこ等)・貝類など)スナック菓子即席めんレトルト食品 など

この食事療法で目標値にならない場合はより厳しい食事療法を行う必要があるので、医師や栄養士に相談します。

 

 

院長の独り言  同時に腹囲についてもチェックしてみてください。ウエストとは違います。
          お腹の一番ワイドな部分を計ってみましょう
          目指すのは 男性85cm未満 女性90cm未満 です!


|運動療法

 

運動療法は、全身を動かして大量の酸素を取り込み脂肪を燃焼させる有酸素運動を無理なく続けることが効果的です。
毎日、もしくは1日おきに1時間、あるいは週5から6日30分間行えば効果が期待できます。ただし、体調がすぐれなかったり、運動中に症状が出たら中止しましょう。

有酸素運動   ウォーキング ・ サイクリング ・ スイミング ・ 水中ウォーキング
         ジョギング ・ エアロビクス ・ なわとび 等

 生活習慣の是正を3〜6カ月続けても目標値に達しない場合は薬物療法を行います。
ただし家族性高脂血症は早くから薬物療法を行う必要があります。

 

|薬物療法

 

脂質異常症治療薬には、その脂質に合わせていくつかの種類があります。

 

高コレステロール血症には

HMG‐CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)  
最も多く使われています。コレステロールの合成を抑制  
商品名  リバロ・メバロチン・リピトール・リポバス・ローコール・クレストール

コレステロールの吸収阻害薬(小腸コレステロールトランスポーター阻害剤)  
コレステロール吸収を選択的に阻害  商品名  ゼチーア

レジン(陰イオン交換樹脂) 胆汁酸の糞中排泄量を増大  商品名  コレバイン

プロブコール(コレステロールの胆汁中への異化排泄促進)商品名  シンレスタール

ニコチン酸誘導体(微小循環系賦活剤・脂質代謝改善作用)  商品名 ユベラN

スタチン系薬剤の副作用について
HMG‐CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)には、横紋筋融解症(Rhabdomyolysis)という副作用の発現が報告されています。横紋筋(骨格筋)とは体を構成する、いわゆる大きな筋肉です。それが解けることにより、その融解物が腎臓に目ずまりを起こし障害したりミオグロビン尿という茶褐色の尿が出ることがあります。また筋肉への作用で、筋肉のしぶり・痛み・手足のしびれ・つり等の症状が出現することがあります。
その様な症状を自覚した場合、すぐに主治医に報告し服用を停止しましょう。

 

高トリグリセリド血症には

フィブラート系薬物  
ベザフィブラート(家族性高脂血症にも効果・HDLコレステロール増加)
商品名 ベザトール
フェノフィブラート(トリグリセライドの低下・HDLコレステロール増加)
商品名 リピディル・トライコア

多価不飽和脂肪酸(純濃度EPA(エイコサペント酸エチル)製剤)
血清トリグリセライド低下・血小板凝集阻止・抗動脈硬化作用   商品名  エパデール

 これらの薬はいずれも副作用は比較的少ないものですが、まれに筋肉や肝臓の障害などを起こすことがあるので、医師の指示に従ってきちんと服用してください。

田島クリニック

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