不整脈
|不整脈とは?
心臓の筋肉は、電気信号によって規則正しく収縮と弛緩を繰り返し、血液を全身に送り出しています。右心房にある洞房結節 から出た電気信号が心筋を刺激して心臓の収縮が起こります。1分間に約50〜100回収縮し生まれてから死ぬまで一生動き続けてくれます。
この規則的な電気信号の流れが障害されると心臓の拍動のリズムが不規則になります。その脈の乱れた状態が<不整脈>です。
心筋の興奮伝導(電気刺激の伝わり方)
<右心房> <右心房下方> <心 室>
⇒ 右 脚
洞房結節(SA node) ⇒ 房室結節(AV node)⇒ 左脚前枝
⇒ 左脚後枝
不整脈の原因
不整脈は心臓内の刺激伝導障害で発生しますが、心臓病との関連により次のようなファクターが原因として考えされます。
心臓病と関連ないケース 加齢・体質・遺伝・ストレス・睡眠不足・疲労・脱水・薬剤
心臓病と関連するケース 虚血性心疾患・先天性心疾患・弁膜症・ホルモン疾患・高血圧
1. 加 齢
年をとるにつれ不整脈は発症しやすくなります。
2.体質 ・ 遺伝
家系に不整脈の人がいるケースでは不整脈を発症するケースがあります。体質的なものです。
3.ストレス ・ 睡眠不足 ・ 疲労
自律神経が作用を受けます。体力が極度に低下し体調不良の場合不整脈は発症しやすいです。
4.脱 水
水分のバランスが崩れた時に心筋の電気刺激系統に支障をきたし不整脈が発症します。
5.薬 剤
内服している薬剤の副作用により脈が影響を受けるケースもあります。
6.虚血性心疾患
狭心症で冠動脈の血流が低下した部位もしくは陳旧性心筋梗塞がある場合、そこが不整脈の原因になるケースがあります。
7.先天性心疾患
心房中隔欠損症(ASD)・心室中隔欠損症(VSD)など、先天的な異常部位が心臓内の刺激伝導経路を障害している際に起こります。
8.弁膜症
弁膜症になると、心房・心室内の圧力バランスが崩れが生じ、刺激伝導経路が障害され不整脈が発症しやすくなります。
9.ホルモン疾患
典型例は甲状腺疾患(甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症など)です。甲状腺ホルモンは主に心臓に作用ます。甲状腺機能亢進症の場合、甲状腺ホルモンが過剰に分泌され心臓が刺激を受け頻脈となります。甲状腺機能低下症の場合逆になります。
10.高血圧
高血圧により心臓に圧力の負担が継続的にかかった場合、不整脈が発症しやすくなります。
心臓に病気がない健康な人でも、24時間心電図を記録すると必ずいくつかの不整脈がみつかります。軽度な不整脈なら誰にでも起こりうるものだと言えるでしょう。このような軽い不整脈は全く自覚症状を伴わずく治療を必要としません。また常時不整脈を起こしている人でも日常生活にはなんら問題がない場合も多いあります。大切なことはその不整脈が治療を必要とするかどうか、正確に診断することです。
不整脈と自律神経
不整脈の中には原因を特定しにくいケースが多くみられます。実はストレスが誘因になっているケースがあります。自律神経の一つである交感神経は、ストレスの影響を受けやすいのです。
<自律神経>
- 交感神経 体を動かす方向へ作用
- 副交感神経 体を休める方向へ作用
交感神経と副交感神経のバランスで体は恒常性を保っています。心臓のリズムをコントロールしているのは交感神経です。緊張・興奮で脈が速くなります。交感神経が心臓の拍動を速め、血液を大量に送り出すためです。過剰のストレスで交感神経がうまく働かず不整脈が発生します。
交感神経は心室の内側よりも外側に多く分布し、この分布の偏りによって心臓の筋肉がコントロールされ、突然死につながる不整脈を防ぐシステムをつくっていることが判明しています。このことからも、交感神経が不整脈に大きな影響をもっていることがわかります。
病気に気づいたらどうする?
不整脈は、治療が不要なものから命に関わるものまで、非常に多くの種類があります。ある種の不整脈は生命の危険を伴っており突然死の原因にも成り得ます。毎年の健康診断をきちんと受けること、そして健診で異常が見つかったり、胸の自覚症状があった際には循環器科、もしくは不整脈専門の外来を受診することをすすめます。
不整脈の分類
安静時の脈拍は通常50〜100回/分程度であるが、これより多い場合を頻脈、下回っている場合を徐脈となります。不整脈は大きく分けて3つの種類があります。
1.頻脈性不整脈 脈が速くなる
(心房細動・発作性上室性頻拍・WPW症候群・心室頻拍・心室細動など)
2.徐脈性不整脈 脈が遅くなる
(洞不全症候群・房室ブロック・脚ブロックなど)
3.期外収縮 脈が飛ぶ・欠ける
(心房性期外収縮・心室性期外収縮・心房細動など)
|頻脈性不整脈 脈が速くなる
通常より脈がかなり速くなるタイプの不整脈です。電気刺激が異常に早くつくられるか、異常な電気の伝導路ができて電気の空回りが起こるために発生します。急に脈が1分間に140回以上にもなる場合には、危険な状態といえます。頻脈をきたす病態には、
心房細動・発作性上室性頻拍・心室頻拍・心室細動・WPW症候群
などがあります。
正常人などにも運動後に見られます。心電図上正常の波形で頻脈となります。安静時においても見られる場合、呼吸器疾患・感染症・内分泌疾患・神経疾患・精神疾患などを疑う必要があります。
心房内のあらゆる部位からの異所性電気的興奮が無秩序に 350回/分以上発生します。そのため心房自体は震えた状態となり完全に収縮できません。結果的に心室への血流は減ることになります。心電図では明確なP波が存在せず、基線が揺れ動きます。R-R間隔が完全に不規則である場合、ほとんどの場合心房細動と言えます。
心房内の異所性電気的興奮が無秩序に 240〜450回/分以上発生します。電気的興奮が主に右心房内を大きく旋回する頻拍(脈拍が速くなる)となります。心電図では基線が鋸歯状に揺れるのが特徴です。
複数の部位から異なる電気刺激が発生します。心房細動と同じく、R-R間隔は完全に不規則ですが、形・向きがさまざまなP波が存在する。心房細動に比べると稀です。
これは大きな分類であり、心室性リズムでは無いと言うことのみを意味する。原因を検索し治療するためにはより細かく分類する必要がある。
心臓の興奮は一方向にしか伝わらないのが正常ですが、先天異常や心筋梗塞後などで興奮が逆行する経路(リエントリー経路 Re-entry)が形成されることがあります。
心房と心室の間で電気刺激を伝える余分な伝導路(副伝導路)が先天的に存在する障害です。心拍数がきわめて速くなる発作がみられる場合があります。この副伝導路をKent束といいます。Kent束は、右房-右室あるいは左房-左室に存在するものがあり、稀に心室中隔に向かう場合もあります。WPW症候群では、心室が早期に興奮することで デルタ(Δ)波 と呼ばれる特有の波形が心電図のP波の後に現われるのが特徴です。これが脚ブロックとの違いです。
WPW症候群と心臓突然死
WPW症候群は、典型的な心臓突然死の原因の一つです。心房に頻拍や細動・粗動などの頻拍性不整脈が発生すると、頻繁な興奮がKent束を通り、頻拍として心室に伝導され心室性頻脈又は心室細動を引き起こします (pseud VT 偽心室頻拍)。これに対して、カテーテル焼灼法や外科的処置により副伝導路を断つ治療が行われます。
突然に脈拍が速くなり(160回〜220回/分くらい)、突然に元に戻るのが特徴です。頻脈発作が短い場合は動悸を自覚する程度ですが、脈拍200回/分くらいになると、胸苦しさやめまいを伴い,やがて手足が冷えてきて顔面蒼白になり、更にひどくなると意識が遠のいたり吐き気を催したりします。頻脈発作の持続時間は数秒から数時間までとさまざまで、起こる回数もまちまちです。
発作性上室性頻拍症が起こるメカニズム
別の伝導路を通った信号が、正常伝導路を通って心房に再び戻ってきてしまう(リエントリー Re-entry) により、頻脈発作が誘発されます。正常伝導路と副伝導路の両者を介して信号がグルグル回り出して,心拍数が異常に多くなります。
1.正常伝導路(房室結節)+ケント束(心房・心室を短絡する副伝導路)⇒WPW症候群
発作性上室性頻拍を引き起こす最も一般的な原因
2.房室結節リエントリー ⇒先天的に心臓の刺激伝導系に異常
本来は1本の房室結節内の伝導路が2本以上存在
心電図上QRS幅正常、異常P波が認められます。(P波(心房の活動)が認められない)。
脈拍数による分類
- 50〜100回/分 ⇒ 正 常
- 100〜250回/分 ⇒ 頻 拍 ・ 頻 脈
- 250〜350回/分 ⇒ 粗 動
- 350回/分以上 ⇒ 細 動
心電図QRS幅による分類
頻脈の場合はQRS幅が非常に重要です。
- QRS幅 0.12秒(3mm未満) ⇒ 上室性不整脈(大抵は心房性)
- QRS幅 0.12秒(3mm以上) ⇒ 心室性不整脈
|徐脈性不整脈 脈が遅くなる
通常より脈がかなり遅くなるタイプの不整脈です。40回/分程度まで低下した場合は、危険な状態といえます。心臓の中で電気が作られなくなったり、途中でストップしたりするために起こります。徐脈をきたす病態として、洞不全症候群・房室ブロックがあります。一般的には <上室性> と <心室性> に分類されます。
上室性
洞結節で発生した興奮伝導が心房に伝わらない状態。洞房結節と心房の間でブロックされる。
心房から心室への興奮伝導が不完全であるかまたは全くない状態。心房と心室の間でブロックされる。
房室ブロックの中でも最も軽度なタイプ。心電図上P波存在すし、P波とQRSの間隔が一定であるが、PR間隔の延長(0.21秒以上)が認められる。
PR間隔とは、心房−心室の伝導時間を示しています。
房室ブロックの中でも中等度なタイプ。心房−心室のブロックが1度より強度で、心電図上P波の後にQRSが抜け落ちます。ブロックされる部位により以下の2つのタイプがあります。
ウェッケンバッハ型房室ブロック(房室結節より上でブロックされている場合)
PR間隔が徐々に開いた後、QRSが抜け落ちる
モービッツII型房室ブロック(房室結節より下でブロックされている場合)
PR間隔は一定であるが、QRSが抜け落ちるが
房室ブロックの中で最も重症のタイプ。洞房結節から電気刺激は出るが、心室への伝導が完全にブロックされている。そのためP波が存在するが、P波とQRS波の間に何ら時間的関連性がない
洞房結節と房室結節の関連性が完全に失われ、各々の電気刺激がランダムに出現する。
房室結節からの電気刺激のみ(接合部調律)で心臓が拍動する状態
洞房結節の働き自体が弱く電気刺激を発生できないタイプ。徐脈になり、脈拍自体が少なくなる。欠神発作の原因となります。
息を吸うと脈は速くなり、息を吐くと脈は遅くなります。運動や体温の上昇でも脈は速くなります。これらの脈の変化は病的なものではなく、生理的な反応と言えます。心電図のRR間隔が呼吸により変動します。若年者に良く見られ脈拍が不整であるが有意な病気ではありません。
心室性
左右の心室壁のいずれかにおいて神経伝達が途切れている状態です。途切れているほうの心室壁は心筋伝導によって、もう一方より遅れて収縮するため、QRSの波形は二峰性(ウサギの耳状)になります。
部位による分類
- 右脚ブロック (Right bundle branch block RBBB)
- 左脚ブロック (Left bundle branch block LBBB)
胸部誘導心電図に於いて、V1で下向きの二峰性、V6で上向きの二峰性なら左脚ブロックであり、右脚ブロックはその逆となります。
程度による分類
- 完全脚ブロック QRS幅 0.12秒(3mm)以上
- 不完全脚ブロック QRS幅 0.12秒(3mm)未満
以上より
完全右脚ブロック
不完全右脚ブロック
完全左脚ブロック
不完全左脚ブロック
の4種類に分類されます。
徐脈(Bradycardia)の考え方
- 心拍数の正常値 50〜100回/分
- 徐 脈 脈拍50回/分以下
- 脈拍は日内変動があり夜は遅くなる傾向
- 要注意症例
欠神発作・意識消失発作・極度の徐脈・2秒以上のポーズ(脈間の時間が長い)
房室ブロック(AV Block)と洞不全症候群(Sick Sinus Syndrome)
不整脈の発生機序として刺激伝導異常と刺激生成異常があります。
- 房室ブロック(刺激伝導異常)P波が正常に存在 ⇒ ペースメーカーの適応
- 洞不全症候群(刺激伝生成異常)P波の出現に障害 ⇒ 経過観察・QOL向上
|期外収縮 脈が飛ぶ・欠ける
期外収縮 (Premature Contraction)はR-R間隔がほぼ一定だが、脈が一瞬飛んだり、リズムが乱れて、不規則なうち方をするタイプの不整脈です。電気の生じる場所以外から早めに刺激が出てくるために起こる現象です。この刺激が心房から出る場合には心房性期外収縮、心室から出る場合は心室性期外収縮と呼ばれます。
一般的には無症状で自分で脈をとった際に脈が抜けることで気づく場合、もしくは検診の心電図で指摘される場合が多いです。
期外収縮の症状
- 脈が飛ぶ・脈が欠ける
- 胸部不快感
- めまい・失神(連発時)
器質的心疾患がない場合は基本的に経過観察となります。心疾患(狭心症・心筋梗塞・心不全・弁膜症など)がある場合は最悪の場合心室細動などに移行する可能性があり注意を要します。
心臓突然死
不整脈・心筋梗塞・心筋症・弁膜症などの心疾患による突然死は心臓突然死と呼ばれています。その原因としては、虚血性心疾患・心室細動が多いとされています。QT延長症候群やブルガダ症候群などの特殊な心電図波形を示す不整脈も心臓突然死の原因として知られています。
通常、成人の脈拍数は1分間に50〜100回程度で、一定間隔の規則正しいリズムを刻んでいます。脈拍数には個人差があるので、普段の自分の脈拍数(安静時)を測定し、その数値を知っておくといいでしょう。
不整脈の症状
不整脈はタイプに従って症状が異なり、それに伴った自覚症状が現れます。
|頻脈の場合(脈が速くなる 100回/分以上)
脈拍数の増加に伴って、動悸が起こります。すぐに治まる場合は別ですが、更に動悸が激しくなると、めまい・冷や汗・吐き気 などを伴い、心臓が十分な血液を送り出せなくなって時には意識消失を伴います。
対象疾患 : 発作性頻拍症・心室細動や・心房細動
|徐脈の場合(脈が遅くなる 50回/分以下)
脈が遅くなりすぎると、全身に十分な血液が送られない状態となり脳や体の血液の循環が低下します。症状としては 欠神発作・失神(Adam-stoks発作)・全身倦怠感・めまい・ふらつき・体動時の息切れ などがあります。症状が治まらないときには心不全を起こしている可能性もあるので、すぐに受診する必要があります。
対象疾患 : 洞不全症候群・房室ブロック
|期外収縮の場合(脈が飛ぶ・欠ける)
期外収縮は症状のない場合が多いのですが、症状の出る場合は、脈の飛ぶ感じや、胸部の不快感、きゅっとする胸の痛みとして感じます。ただし、この時の痛みは胸の狭い範囲で起こり、しかも一瞬または数十秒以内でおさまるのが特徴です。胸痛がなかなか治まらない場合は、狭心症や心筋梗塞の可能性もあります。脈のリズムがバラバラになる場合には、心房細動などの可能性もあります。
期外収縮では、本来のリズムより早めに刺激が出て心臓が動くため、1回の拍動で十分に血液を送れないのです。そのため、実際は心臓が動いているのに、拍動で生じた圧力は弱く、脈として感じられないので、脈が飛んだように思えるのです。
|精査が必要な重大な症状
ある特定の不整脈には注意を必要とし、怖いタイプの場合があります。これらの不整脈は、専門医の適切な診断と治療を必要とします。これらの怖い不整脈は症状の有無とは関係が無い場合もあるのですが、下記の様な症状を示す場合が比較的多いので注意が必要です。
急に意識が無くなる ・ 失神する ・ 何もしていないのにフラッとする
このタイプの症状は最も危険です。この場合は、一時的に心臓が止まっているか、または極端な頻脈が起こっている可能性があります。失神症状が出た場合は、できるだけ早く病院を受診して、その原因を調べてもらい、治療を始める必要があります。
脈拍数が1分間40以下・体を動かす時に強い息切れめまい
この時は脈が遅くなりすぎて、心不全を起こしている可能性があります。この場合、心臓を動かす電気の作り方に異常があって徐脈となっている場合があります。ペースメーカー治療が必要になることがあります。
<脈拍数が1分間に120以上で、突然始まり、突然止まる> <まったく不規則に打つ>
このようなケースでは脈拍数が150から200前後になります。自分で手首を持っても脈を感じるのが難しくなり、血圧は下がり、息苦しく、冷や汗が出てきます。
こうした頻脈が心室から発生している場合は、非常に危険です。それは、全身に血液を送り出す最も重要なポンプ機能を持った心室で頻脈が発生すると、その機能が損なわれ、全身にな血液が送り出せなくなるからです。なかでも心筋梗塞などの心臓の病気のある人に心室頻拍という不整脈が出てきた場合は、より怖い心室細動という不整脈に移行することがあるため要注意です。1分間に150以上の頻脈が続く場合は、不整脈をまず停止させて、その後、頻脈を予防する薬剤を服用する必要があります。
突然の動悸・不規則な不整脈・胸苦しさ・息切れ・胸痛・めまい
心房細動とは、心臓のリズム(拍動)が乱れ、血液が心臓内に停滞してしまう状態です。150〜200回/分以上、かなり速い状態での乱れ打ち状態となっているので強い動悸が感じられます。これが続くと心房の中に血栓ができやすくなり、それが脳に飛んで行って脳梗塞を起こすことがあります。そのため心房細動を予防する薬のほかに、血液を固まりにくくする薬を飲んでもらうことがあります。また、常に心臓が全力疾走状態なので、長期間持続すると、心臓の筋肉が弱って心不全の可能性を高める事もあります。
心房細動の治療
心房細動の多くは薬で治療可能です。
- 脈拍数を抑える薬 心房細動自体の治療ではない。心不全への移行を抑える
- 抗凝固剤 血栓の形成を抑える
- 薬剤抵抗性の心房細動 高周波カテーテルアブレーション治療 副伝導路を焼き切る
心房細動と年齢・合併症
心房細動の患者様は加齢により増加し高齢者の患者様の10%程度に認められます。
心房細動が原因で起こる脳梗塞は、<心原性脳梗塞(脳塞栓症)>は、脳梗塞全体の20%程度で、その多くは60〜70代のお年寄りです。心房細動がある場合に脳梗塞が起こる危険性は、心房細動がない場合に比べて6倍になります。このため、心房細動の治療とともに、血が固まりにくくなる薬で梗塞を防ぐ処置がとられます。脳の小さな血管が詰まる梗塞の場合、症状がないこともありますが、何度も起こった結果大きな障害が残ることがあるので、注意が必要です。
院長のひとりごと 心房が完全収縮せず震えているだけなので左心房に血液が淀んでしまいます。結果的に左房内血栓が形成され、それが脳へと移動し、脳梗塞を引き起こすのです。プロ野球の長嶋茂雄巨人軍元監督やサッカー日本代表チームのイビチャ・オシム元監督がなったことでも知られています。
不整脈の検査・診断
不整脈の一般的検査方法をご紹介致します。
聴診器で拍動音を聴取します。脈拍数・脈のリズム・心雑音などをチェックします。
心陰影から心拡大・弁膜症の可能性・肺水腫などをチェックします。
病院・クリニックで行う一般的な心電図検査です。多くの不整脈はこのこの検査で発見されます。もし短時間の検査で発見されない場合時間を延長して記録すると見つかることもあります。
24時間連続で記録する検査です。携帯式の小型心電計を体の装着したまま患者様は帰宅し<ある一日>を過ごしていただきます。
ホルター心電図で解ること
- 一日の総脈拍数(例)脈拍80回/分×60分×24時間=115,200回/日
- 不整脈の数 24時間での発生回数
- 不整脈の種類 心房性・心室性・頻脈性・徐脈性など
- ポーズの時間 心拍数の間隔(徐脈性不整脈の場合)
- 危険な不整脈のチェック 日常無症状の致死性不整脈の有無
- 狭心症のチェック 心電図上でのST部分の変化
24時間中の生活上のイベントを記録していただき、不整脈の発生と照合することにより具体的な心電図変化を把握でき詳細な診断を下すことができます。
人為的に患者様に運動を不可を与え、その時の心電図・血圧・脈拍を記録します。不整脈の発生状況や運動によって不整脈がどのように変わるかを精査します。ベルト上の歩行(トレッドミル)・自転車こぎ(エルゴメーター)・階段の昇降などを患者様に試行していただきます。運動負荷時の脈拍上昇、運動解除時の脈拍の戻りもチェックできます。また狭心症が出るかどうかもチェックできます。
心臓超音波検査は、心臓の形態や動きをみるもので、心臓に病気があるかどうかが診断できます。心臓の収縮状態・弁膜症の有無・不整脈発生時の心臓の動きもリアルタイムで描出されます。
上記の検査で不整脈の精査が必要な場合、または虚血性心疾患が合併している可能性がある場合に施行されます。細いカテーテルを体外より心臓まで導き、心臓の各部屋の圧力などを測定、心機能を総合的に精査します。薬剤を併用することにより薬剤誘発性不整脈もチェックできます。
貧血(ヘモグロビン)や心臓病のマーカー(GOT/GPT/CPK/白血球など)を採血で調べます。
12誘導心電図で不整脈が発見されても、心エコー検査と運動負荷検査で異常がなく、ホルター心電図で危険なタイプでなければ、とりあえず経過観察となります。
不整脈の治療
この10年間で不整脈の治療法はめざましく進歩し、今ではほとんどが治療可能になっています。その不整脈のタイプに合わせ以下のような方法があります。
1.抗不整脈薬(薬物療法)
不整脈の発生自体を抑えたり、脈拍をコントロールする薬物が不整脈のタイプによって使い分けられます。
2.心臓ペースメーカー
徐脈型不整脈の患者様に使われます。ペースメーカーを体内に取りつけることで足りない脈拍や遅くなった自分の脈(電気の流れ)の代わりに心臓の外から電気刺激を与え脈拍を代償する装置です。電気刺激を発する小さな本体(電池)と、その刺激を心臓に伝えるリード(電線)を鎖骨下部の皮膚の下に入れるだけですから局所麻酔で手術可能です。これにより健康な人と変わらない生活ができるようになりました。
3.植え込み型除細動器 (ICD)
心室細動などの危険な不整脈では心臓突然死の可能性が常時あります。体内に埋め込まれた除細動器は不整脈の発生を24時間監視し、察知した場合自動的に心臓に電気ショックを与え(除細動)、心臓のリズムを正常に戻し救命してくれます。
院長のひとり言 ペースメーカーも除細動器も、それ自体がコンピュターなんですね!
4.カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)
カテーテルを体外より挿入、心臓内に留置します。その先端から高周波を流し、頻脈の原因になっている心臓の筋肉の病的部分を焼灼します。これにより不必要な電気刺激経路を途絶させることができます。
不整脈治療の最近の動向
全ての抗不整脈薬は副作用により、それ自体が不整脈の原因となり得ます。最近の趨勢としては、電気的治療をまず優先し、薬剤の種類を少なくする治療方針が一般的です。
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