横浜・馬車道の総合診療クリニック

じんま疹 Uriticaria

| じんま疹とは?

 

じんま疹とは、皮膚の一部に赤み<紅斑>を伴う皮膚の盛り上がり<膨疹>ができ、しばらくすると消えてしまう皮膚の病気です。そのメカニズムは、皮膚の血管から水分がもれて浮腫を形成する結果、かゆみを伴った紅斑や膨疹が出現します。数日以内に治まる急性じんま疹と1カ月以上出没を繰り返す慢性じんま疹とがあり、重症では全身症状を伴います。

 

| じんま疹の発症頻度

 

一般に人口の15〜20%が一生のうちで一度は経験することがあるとされています。それに比べ慢性蕁麻疹の頻度は非常に少ないです。

 

| じんま疹の名前の由来

 

人がイラクサ(蕁麻)の葉に触れると痒みを伴う発疹が出現するためこの名前がつきました。なお、尋常性乾癬の<尋>と蕁麻疹の<蕁>は混同されやすいため、間違って使われることがあります。

じんましんは、激しいかゆみを伴うことが多く、そのためにストレスを感じたり、掻き壊してしまったりすることもあります。なので、症状やメカニズムを理解し、適切な対処法をとれるようにしておくとよいでしょう。

じんま疹の原因

| 皮膚の構造

 

人間の皮膚の表面には角層(表皮の最外層)があり、外部の刺激物などの侵入からからだを守る役目をしています。角層の下に表皮と真皮がありますが、真皮には蕁麻疹の原因となるヒスタミンなどを蓄えている肥満細胞(マスト細胞)が存在します。

 

| じんましんの起こるメカニズム

 

皮膚の血管や血管の周囲には、肥満細胞(好塩基性の細胞)が散在しており、この肥満細胞の中にヒスタミンという成分が多数含まれています。肥満細胞が何らかの刺激を受けるとヒスタミンなどケミカルメディエイターが放出されます。ヒスタミンが血管を拡張させ、血管の透過性が亢進し血管外への血漿成分の漏出を起こします。その結果、皮膚にミミズ腫れ、ブツブツ(膨疹)や赤み(紅斑)が生じ、また、皮膚に存在する神経に作用してかゆみを生じます。そして皮膚の真皮内に流出した血漿蛋白が真皮の組織間隙圧によって抑制され、限局した浮腫となり膨疹として皮膚に発現します。更にヒスタミンは皮膚の神経を直接的に刺激しかゆみを誘発します。

 

| 原因によるじんましんの分類

 

じんましんには、アレルギー性(即時型アレルギー)・非アレルギー性・特発性(原因不明)があります。

 

 

 1.アレルギー性(即時型アレルギー)じんましん

 

これらに含まれるアレルギーの原因物質が、体の中で異物として認識されると、細胞からさまざまな化学物質が放出されます。その中のヒスタミンという物質が皮膚の血管を拡張させ、血液中の水分を血管の外に浸み出させるため、皮膚が赤く腫れるのです。また、ヒスタミンはかゆみを感じる神経を刺激するため、かゆみも出現します。これがアレルギー性じんましんの起きる代表的な仕組みです。

アレルギー性じんましんの原因

食べ物
  • 魚介類  サバ・マグロなどの青魚 魚肉が古くなりヒスタミンが産生される)
  • 肉 類  豚肉など
  • 卵・乳製品
  • 穀 類  もち・そばなど
  • 野菜・果物  タケノコなど
  • 甲殻類  エビ・カニなど
  • 食品添加物  香辛料・防腐剤・人工色素・サリチル酸など

小麦・ソバ・乳製品・卵・落花生は、五大アレルギー成分といわれています。

 

動 物
犬・猫・ハムスターなど(皮屑が抗原となる)

 

植 物
蕁麻(じんま)・ゴム など

 

昆 虫
ハチ・蚊などの虫刺症

 

薬 剤

抗生物質(ペニシリンなど)・解熱鎮痛剤(アスピリンなど)・咳止め・降圧剤など 
降圧剤は血管性浮腫の原因になることがあります

降圧剤ACE阻害剤とじんましん
降圧剤のACE阻害薬がじんましんの原因のことがあります。ACE阻害薬によりブラジキニンの産生が生じ、それが血管透過性の亢進を招くのが原因です。最近はARB(アンギオテンシンII受容体拮抗薬)での報告があります。

 

遺 伝

遺伝的に特定の物質が作られない病気でもじんましん・血管浮腫が発症します。HANE(遺伝性血管神経浮腫)と呼ばれています。補体第一成分阻害因子(C1-INH)の先天的欠損で、補体の過剰な活性化により血中補体価の低下がおこります。

 

感染症
細菌やウイルス

 

悪性腫瘍
がんや肉腫など

 

自己免疫疾患
自己の成分に対する過剰反応が病因となる

 

薬剤が原因で起こるアレルギー性じんましんは、重篤化する可能性もあるため、早めに病院を受診するようにしましょう。

 

 

 2.非アレルギー性じんましん

 

非アレルギー性のじんましんは、摩擦・圧迫・熱さ・寒さ・日光・紫外線などが原因で起こるものです。非アレルギー性じんましんでは、かゆみが伴わないことも稀にあります。

 

非アレルギー性のじんましんの原因

物理的刺激  機械的じんましん
  • 摩 擦  下着による摩擦など
  • 圧 迫  買い物カゴやバッグを持ち手による圧迫など
  • 振 動  マッサージ器のよる振動など
  • 温 熱  熱さ
  • 寒 冷  寒さ
  • 日光・紫外線
入浴や運動による発汗

血液疾患、膠原病などがある人、心身のストレスの強い人では、運動や発汗が刺激となって、じんましんになることがあります。神経の末端からアセチルコリンが分泌されて生じるコリン性じんま疹は青年に多く、温熱や運動などにより現れます。

 

過労・ストレス・睡眠不足・精神的緊張

過労・ストレス・睡眠不足・精神的緊張は、じんましんを起こしやすくする誘因となります。

 

 

 3.特発性じんましん

 

じんましん患者さんの70%以上では誘因が明らかではありません。このタイプの蕁麻疹は毎日のように症状があらわれます。原因は解明されていませんが誘因が明らかでない特発性のじんましんでも、多くの場合疲労・ストレス・感染など様々な因子が症状を悪化させます。

アレルギー体質の人は、じんましんになりやすく、アレルギー性じんましんでは、同じものを摂取したり、接触したりすることで再発することがよくあります。1ヶ月以内でおさまるものを<急性じんましん>と呼びますが、1ヶ月以上にわたって断続的に発症するものを<慢性じんましん>といいます。じんましんの多くは短時間で跡形もなく消えますが、とくに原因のはっきりしないものでは繰り返し生じることもあります。でも、正しい対処法を知っていれば、慌てなくてすみ、つらいかゆみをやわらげて掻き壊しなどを防ぐことができます。

じんま疹の症状

最初に蚊に刺された様な赤いふくらみがポツッと現れ、それが徐々に広がり体のあらゆるところに出てきたりします。かゆみの強い境界がはっきりした紅斑や膨疹が数時間で消えたり、位置が移動したりします。一般に円形・地図状・線状などの形となり皮膚の灼熱感・かゆみを伴う発疹が生じます。その時掻痒感はありますが自然に、または治療後に跡形もなく消えてしまうのが非常に特徴的です。

じんましんの症状の特徴

  • かゆみ・皮膚の灼熱感のある膨疹  軽度の膨らみをもった<みみず腫れ>
  • 徐々に拡大
  • 体のあらゆる所に発症  特に大腿・臀部
  • 数分から数時間で消失  半日から一日程度続くこともあります
  • 発作的には反復して発疹が出現

じんましんであらわれる膨疹(ぼうしん)は2〜3mmの円形・楕円形のものから、直径10cm以上の地図状のもの、コリン性じんま疹では数mmの白色の膨疹が体幹に見られ、その形状は様々です。一ヶ所にできたかと思うと消え、また別の場所に出てくる、というようなこともあります。症状が強い場合は、次々と新しい膨湿ができ、広い範囲に広がることもあります。。

じんましんの名前の由来
蕁麻(じんま)(別名イラクサ)という植物の葉に触れたときにあらわれる皮膚症状によく似ているためです。植物の名前が由来です。

 

| 血管浮腫(クインケ浮腫)

 

じんましんの一種に血管浮腫(クインケ)という病態があります。皮膚の毛細血管の拡張と透過性の亢進によりおこる。じんましんが皮膚の表層で起こるのに対して、真皮深層や皮下組織など深いところで炎症を起こし、一過性限局性の浮腫が生じるので<血管浮腫>と言われています。通常顔面・口唇・四肢などがはれて数日後に治まります。

血管浮腫(クインケ浮腫)の特徴

  • 顔面・口唇・四肢に出現
  • さほど痒みはない
  • 出現すると3−4日続くのが特徴
  • 気道内浮腫  呼吸困難
  • 腸管浮腫   腹痛

血管浮腫(クインケ浮腫)の重症例
血管浮腫(クインケ浮腫)は皮膚の深在性に起こるため、重症化すると気道・消化管浮腫となります。気道の粘膜が腫れた場合呼吸困難感を、消化管の粘膜が腫れた場合消化器症状(腹痛など)の症状が出現します。最も怖いのが浮腫浮腫です。喉が詰まる感じやから呼吸困難となり更にはショック状態となり死亡することもあります。死因はおもに喉頭浮腫による窒息死です。

喉頭浮腫・呼吸困難時の対処法
喉頭浮腫の際には喉頭が腫脹し空気の通り道が完全に閉塞してしまいます。救急の現場では、緊急の気管切開を施行し気道を確保します。緊急の気管切開もできない状況下では、首に太い針を刺し、気管に貫通させ気道を確保します。極めて恐ろしい状況です。

じんま疹の分類

じんましんは、観点の違いから多様に分類されます。

 

|じんましんの経過による分類

 

じんましんはほとんどのケースで数分から数時間で消失しますが、再発を繰り返すこともあります。医学的には1カ月以内に治まるものを<急性じんましん>、1カ月以上も発症が続くものを<慢性じんましん>としています。

急性と慢性は期間的な違いだけであり、症状に差はありません。毎回同じ時間に数分間だけ発症してはすぐ消えたり、特定の季節に数時間出現して治まるじんましんもあります。

じんましんの原因のおおまかな分類

  • 急性じんましん  風邪・体調不良・一時的な食あたりなど
  • 慢性じんましん  アレルギー性・汗・ストレス

 

|じんましんの原因による分類

 

じんましんは症状による分類ではなく、原因による分類が一般的です。じんましんが発生しやすい人は原因物質を避けることが予防であり、それを継続することで治りやすくなります。じんましんは、その原因により    アレルギー性じんましん と 非アレルギー性じんましん に分類されます。

 

 

 1.アレルギー性じんましん

 

アレルギー性じんましんは、I型アレルギーが関与していると考えられています。まずアレルギーの原因物質(アレルゲン)が体内に侵入し、異物(抗原)として認識されると一連のアレルギー反応が起こります。アレルギーに関与する抗体(IgE)が肥満細胞に付着しており、アレルゲン(抗原)が抗体(IgE)に付着すると肥満細胞が活性化し中にある化学反応物質(ヒスタミンなど)を大量に放出して症状を引き起こします。抗原被曝から30分以内には症状が出でます。ヒスタミンの放出は15分程度であり通常は比較的短時間で治まります。

 

アレルギーの主役 ヒスタミンの役割
ヒスタミンは皮ふの血管を拡張させ、血液中の水分を血管の外に浸み出させるため、皮膚が赤く腫れるのです。またヒスタミンはかゆみを感じる神経を刺激するため、かゆみも出現します。これがアレルギー性じんましんの起きる代表的な仕組みです。

繰り返しの抗原被曝により肥満細胞が活発になり皮疹の出現・消腿が1ヶ月以上も続くことがあり、その場合、慢性じんましんに分類されます。接触性皮膚炎(かぶれ)でみられる湿疹は、IV型アレルギーであり、I型アレルギーとは機序が異なります。

 

アレルギー性じんましんの分類

 

食物性じんましん

食事性アレルギー・じんましんは肉・魚・卵などの食事性アレルゲンを体内に入れることで起こります。原因食物を摂取してから通常30分以内に起こります。サバなどの生魚は古くなるとすぐ醗酵してヒスタミン性の物質を作るのが原因とされています。一方その食物そのものに対してアレルギー反応がないが消化器官で代謝された代謝産物に対してアレルギー反応が起こるケースもあります。食べ過ぎ・飲みすぎ・風邪による感染性胃腸炎などがあると、体にとって異物とみなされる不純物(抗原物質)が吸収されじんましんが生じやすくなります。アレルギー反応のみならず他の要因が関与し発症することもあります。

  • 魚介類  サバ・マグロなどの青魚 魚肉が古くなりヒスタミンが産生される)
  • 肉 類  豚肉など
  • 卵・乳製品
  • 穀 類  もち・そばなど
  • 野菜・果物  タケノコなど
  • 甲殻類  エビ・カニなど
  • 食品添加物  香辛料・防腐剤・人工色素・サリチル酸など

小麦・ソバ・乳製品・卵・落花生は、五大アレルギー成分といわれています。

 

吸入性じんましん

吸入性アレルゲンは花粉・ハウスダスト・ペット(犬・猫・ハムスターなど)の毛・皮屑などです。これらを吸入し体内にアレルゲンが侵入することでアレルギー反応が起き、じんましんが発現します。

 

接触性じんましん

蕁麻(じんま)・ゴムなどの植物の葉や樹液などに触れた際にアレルギー反応が起き、じんましんが発現します。

 

刺咬性じんましん

刺咬性じんましんはハチ・ムカデ・蚊の毒素などが虫刺症体内に入ることで起こります。

 

薬剤性じんましん

薬剤によるアレルギーでじんましんが発症します。薬剤摂取後通常30分以内に起こります。抗生剤・非ステロイド系解熱鎮痛剤(NSAIDs)の頻度が高いです。

 

薬剤性じんましんの原因薬剤
抗生物質(ペニシリンなど)・解熱鎮痛剤(アスピリンなど)・咳止め・降圧剤など

降圧剤ACE阻害剤とじんましん
降圧剤のACE阻害薬がじんましんの原因のことがあります。ACE阻害薬によりブラジキニンの産生が生じ、それが血管透過性の亢進を招くのが原因です。最近はARB(アンギオテンシンII受容体拮抗薬)での報告があります。

 

遺伝性じんましん

遺伝的に特定の物質が作られない病気でもじんましん・血管浮腫が発症します。HANE(遺伝性血管神経浮腫)と呼ばれています。

  • CINCA症候群(chronic infantile neurological articular syndrome)

補体第一成分阻害因子(C1-INH)の先天的欠損で、補体の過剰な活性化により血中補体価の低下がおこります。生後に発症し皮疹・中枢神経症状・関節症状が3主徴

  • Muckle-Wells症候群 

じんましんと腹痛が1〜2日続き、それを周期的に繰り返すのが特徴

  • 家族性寒冷じんましん

生後〜10歳位までに発症。寒冷によって誘発され発熱・関節痛を伴う発疹。1日以内には消褪

 

感染症

細菌やウイルスの感染を契機に発症します。扁桃腺炎・虫歯・副鼻腔炎影響・病巣に住みつく細菌の毒素や死んだ組織などが原因となります。原因が特定できない場合は特発性じんましんに分類されます。

悪性腫瘍

がんや肉腫など悪性腫瘍が体内に存在しているとじんましんが発現しやすくなります。

 

自己免疫疾患

自分の臓器に対し自己抗体が生じ自分自身を攻撃してしまう病態を自己免疫疾患とよびます。この症状のひとつとしてじんましんが発症しやすくなります。2〜3年以上続く慢性じんましんの中には膠原病や内臓疾患を合併していることがあります。

薬剤が原因で起こるアレルギー性じんましんは、重篤化する可能性もあるため、早めに病院を受診するようにしましょう。

 

 

 2.非アレルギー性じんましん

 

非アレルギー性じんましんは物理性じんましんともいわれます。機械刺激・温度・圧迫・汗・運動などで誘発されます。アレルギー反応はないが、何らかの刺激でヒスタミンが肥満細胞から分泌されたり、神経末端よりアセチルコリンなどの物質が分泌され、血管透過性が亢進して症状が出ます。アレルギー性じんましんと異なりヒスタミンなどの放出が長期化すぐに治まるとは限りません。原因機序が明確でないため非アレルギー性じんましんと扱っているものも含まれます。

 

非アレルギー性じんましんの分類

 

機械的じんましん

皮膚を圧迫するなどの外部から機械的な刺激で起こります。例えば、腕時計のバンド・ベルトで押さえていたお腹・下着のゴムによる締め付けなどを受けると発症しやすいです。みみず腫れ(機械刺激による物理性じんましん)は接触による膨疹が線上に配列し融合することで生じます。

 

温熱じんましん

エアコン、コタツ、ストーブ、布団、風呂などによる温水や温風のような温かい外部刺激により、特定箇所の体温が上がったところにできます。

 

寒冷じんましん

寒冷により生じる寒冷じんましんは、クーラー・扇風機・外気などによる冷水や冷風のような冷たい外部刺激により、特定箇所の体温が下がったところにできます。冷たい飲み物(ビール・ジュース・水)を一気に飲むと咽頭や喉頭に浮腫を生じ呼吸困難になりやすいです。

 

日光じんましん

日光被曝により起こるじんましんです。4〜9月の強い紫外線などで、太陽に直接当たった部分がかゆくなります。膨疹は日光の当たった皮膚に限局して現れ、日光を避けると1〜2時間くらいで痕跡を残さず消えていくのが特徴です。波長の違いで6型に分類されています。光のエネルギーにより皮膚の成分が修飾されて構造が変化し、それが抗原となって即時型アレルギー反応が成立するという説もあります。

多形日光疹
日光じんましんと似た症状をもつ疾患として多形日光疹があり鑑別が必要です。多形日光疹は日光照射後数時間してから発疹が現れ、それが数日間持続するという違いがあります。

 

コリン性じんましん

運動、入浴、精神的ストレスによる発汗で起きます。特に汗を拭き取らずに放置することでかゆくなります。発汗刺激により生じる場合が多いが、ストレスや不安や興奮など、生じる原因は数多くあります。

コリン性じんましんの特徴

  • 膨疹とその周囲に紅斑を伴うという特徴的な発疹
  • 痛痒さ時に激痛  痒みより痛みの感覚が強い
  • 汗をかくたびに生じる  一過性の症状

発汗刺激因子により中脳の発熱中枢が刺激され、コリン性神経を介して皮膚の神経末端でアセチルコリンが分泌され膨疹が生じるという説があります。

 

心因性じんましん

ストレス・ヒステリー・てんかん・自律神経失調症などの心の病気が体に影響しじんましんが発現します。

心因性じんましんの原因の多くはアセチルコリンが関与していることが最近解ってきました

 

|原因によるじんましんの細分化

 

よく使われる6通りの名称としては以下のように詳細に分類される場合もありますが、原因を細分化した名称が多く、特別な違いは見受けられません。

 

仮性アレルゲンじんましん

ヒスタミンを多く含む たけのこ・セロリ・ほうれんそう・バナナ などの食物を食べるとじんましんを発症することがあります。純粋なアレルギー反応ではなく多量のヒスタミンが引き起こします。

 

アナフィラキシーショック

1回目は軽い症状でありながら、2回目になると体内にある抗体の影響で重症化するアレルギー症状です。初期症状はじんましん・嘔吐・しびれ感などですが、悪化すると窒息・チアノーゼ・意識レベル低下が起き死亡することもあります。

 

接触じんましん

食物・化学物質・猫・ゴムラテックスなどが触れた部位にのみ発症し、物の形状通りに赤みが現れます。

 

感染性じんましん

風邪や喘息などの上気道感染によって発病します。病巣感染によるじんましんを上気道に限定した状態です。

 

じんましん型薬疹

予防接種・抗生物質・消炎鎮痛剤などの薬の副作用で出てきます。

 

血管性浮腫(クインケ浮腫)

まぶたや唇などが急に腫れあがり、2〜3日で消えます。これはかゆみを伴いません。

 

以上のように多くの種類があります。ただ、実際のじんましんは発生箇所や発生時間に差があっても、大抵はかゆみを帯びた湿疹に近く、むくみがあることが特徴です。治療では外用薬はほとんど使わず、抗ヒスタミン薬などの内服系の処方箋を出されるケースが多いです。

じんましんは抗ヒスタミン薬を処方することで、発症を止めることができますが、これは一時的な治療であるため、じんましんの原因を突き止めて、その物質を避けることで、次第に症状が緩和させる対策が必要です。

子供のうちはアレルギーや温熱が原因になることが多く、逆に大人になってからは心因性や病巣感染が発生しやすくなります。

じんま疹の検査と診断

アレルギー性じんましんが疑われる時は、アレルギーの検査に準じ検査を行います(食物アレルギー・薬物アレルギー)。物理的刺激によるじんましんが疑われる時は、それぞれの刺激を部分的に加えて症状を誘発します。

 

血清TARC(thymus and activation−regulated chmokine)

アレルギー・アトピー体質の重症度の評価をします。

 

TARCは白血球走化作用を持つケモカインの一種で、過剰産生されるとTh2細胞を病変局所に引き寄せ、IgE抗体の産生や好酸球の活性化が起こり、アレルギー炎症反応を惹起すると考えられています。特にアトピー性皮膚炎において特異性がみられ、重症になるほど著明に上昇し、軽快に伴い減少します。TARCの測定は、アトピー性皮膚炎の病態を客観的に数値化します。病勢を反映して変動するため、重症度判定や治療効果判定にも使われます。

 

検査材料:血清
測定方法:ELISA
基準値:単位(pg/ml)

 

  • 小児(6〜12ヶ月):1367未満
  • 小児(1〜2歳):998未満
  • 小児(2歳以上):743未満
  • 成人:450未満

上記の正常値を超えているとアレルギー・アトピー体質と診断できます。またTARCの数値が高い程重症と判断できます。

 

RAST検査とRIST検査

RAST radioallergosorbent test (放射性アレルゲン吸着試験) 
個々のアレルゲンに対してのIgE測定

 

RIST radioimmunosorbent test (放射性免疫吸着試験)
血清中の総IgE測定・アトピーの重症度判定

 

これらの検査は血液中に存在するダニや花粉などに対するIgEの量を測定します。IgEがアレルゲンと反応すると、血液中の肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンが放出されます。この反応が鼻の粘膜・皮膚・気管支に起こると、アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎・気管支喘息を発症するのです。RAST法とは血液中のIgE抗体値を測定し、アトピー性皮膚炎の誘因として疑わしい抗原(アレルゲン)と血清を付き合わせ、実際にアレルギー反応の起こる物質を絞り込む事のできる検査です。主に、花粉・卵・動物のふけ・牛乳・ダニ・ハウスダストなどを検査します。数値が高い程そのアレルゲンに感作され、アレルギー反応が起こりやすいと言えます。一方RISTでは、血液中の全てのIgEの量を定量します。一般的にアレルギーの重症度と比例致します。

 

 

院長のひとり言  RISTの成人正常値は170以下ですが、1000を超えている患者様が来院されたことがあります。かわいそうですが、外見的にもかなりのアトピー性皮膚炎にお悩みで、気管支喘息・アレルギー性鼻炎・花粉症なども併発しておりました。この検査は3歳未満の場合は、アレルゲンとなる物質の特定はしにくいのです。 3歳をすぎてから再度検査をお勧め致します。。

 

プリックテスト

プリックテストは <スクラッチテスト> とも呼ばれる試験法です。テスト開始前に、候補となるアレルゲ(ダニ・ハウスダスト・卵・杉花粉など)を溶かした液体(抗原液)を用意します。前腕屈側の皮膚をアルコール綿で清拭し乾燥後に、皮膚の複数の箇所にわずかに血液がにじむ程度に注射針や木綿針などを刺してから、準備しておいたアレルゲンを含んだ抗原液をそれぞれの場所に1滴ずつ滴下します。1〜2分したら、脱脂綿で抗原液を混ざらないようにして吸い取ります。
 15〜20分後に、抗原液を滴下した場所ごとに、反応の強さ、膨疹や発赤の大きさを測定します。特定のアレルゲンの抗原液を滴下した場所での発赤や膨疹の大きさなどから、どのアレルゲンが原因となっているか判定します。

発赤15mm以上の場合・4〜7mm以上の場合に該当アレルゲンに対して陽性と判定

 

メリット
簡便である
テスト自体によるショックなどの全身症状を起こす危険も少ない

 

ディメリット
皮内テストより感度は劣る

原因と思われる物質を皮内・皮下等に注入してアレルギー反応の誘発を調べる試験です。しかしそれが原因でショックの危険があるため慎重に施行します。

 

食物経口負荷試験(oral food challenge test OFC)

食物アレルギーの原因となる食物の同定を行う検査です。食物アレルギーが出現したが、その食物が原因なのかを調査します。主に小児の患者様に対し行い、医師が近傍に付き添います。アレルギー反応が遅く出現する可能性もあるので1泊入院で行う場合もあります。

 

リンパ球幼若化試験(LTT)・リンパ球刺激試験(LST)

リンパ球刺激試験は、薬物アレルギーなどの原因を調べる方法です。薬物アレルギー患者などの血液から、単核球を取り出し、食物から取り出した抗原とともに培養し、抗原によって活性化されるTリンパ球が存在することを確認します。リンパ球の増殖率で検出する方法です。

  • 抗原を作用させない状態を100%
  • 培養後に181%以上で陽性と判定
  • 遅延型アレルギーの反応

 

パッチテスト

IV型アレルギー(遅延型過敏症)を調べるための検査です。髪の毛を染める(Coloring)前によく施行されています。

 

寒冷じんましんの誘発テスト

寒冷蕁麻疹を例にあげる。洗面器に水を入れ、片方の手を水の中に入れ、他方は外に出しておく。10分後コントロールに比べ水の中に入れた手に紅班・膨疹・掻痒が出現すれば寒冷蕁麻疹と診断できる。また、薬剤性蕁麻疹の検査では1/20の量から内服していき、徐々に内服量を上げていってアレルギー反応が生じるかをみるようなことも行う。

 

ヒスタミン遊離試験

血液に原因と思われる物質を注入し、アレルギーの原因となるヒスタミンが増加するかを血液検査で判定する検査です。自費検査となります。

じんましんの鑑別診断と方法
じんましんでは赤色皮膚描記症という症状があり、皮膚を擦過すると赤く膨隆します。アトピー性皮膚炎では対照的に白色(白色皮膚描記症)となります。湿疹との鑑別は経過から明確であるが、形態学からも鑑別可能です。一般的には湿疹は多様な形態をとりますが膨疹にはあまりなりません。つまり膨疹を見つけることで湿疹を除外できます。しかし膨疹がない蕁麻疹もあります。基本的には治療法は共通しています。

じんま疹の治療

じんましんの治療法には次のようなものがあります。いづれもヒスタミンの働きを抑えることがポイントです。

 

刺激の回避・薬物治療(内服薬・外用薬)・生活習慣の改善

 

 

 1.原因となる刺激の回避

 

じんましんになった、まず原因を同定し、それを取り除くことが第一です。

  • 特定の刺激により症状が現れる場合  刺激を避ける
  • 食物性じんましんが疑われる場合   症状が出現した時に摂食したものを記録
  • 薬剤性じんましんが疑われる場合   薬剤の使用を控える
  • コリン性じんましんの場合 激しい運動や長時間の入浴を控える・過剰発汗を避ける
  • 寒冷じんましんの場合 冷たい水に飛び込んだり、冷水を飲むのを控える

ソバやナッツ類のアレルギーなど、症状が重症になるものは少量でも摂取しないように注意します

 

 

 2.薬物療法(内服薬・外用薬)

 

じんましんは実際には原因を特定できないことの方が多いのです。今起きている症状を改善するために薬物療法を行います。

  • 内服薬 (抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬)
  • 外用薬 (ステロイド・かゆみ止め・軟膏・ローション)

 

症状による治療法の選択

  • じんましん皮膚症状のみ  ステロイド外用薬・かゆみ止め
  • 軽 症   副作用(眠気など)の少ない抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬
  • 重症例  効果の強い抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬(副作用を伴う)
  • 最重症例  経口ステロイド剤(期間限定)

 

病期による治療法の選択

急性期(Acute Phase)

  • 抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬を使用するのが一般的
  • 抗ヒスタミン製剤のレスタミン軟膏・ステロイド外用剤
  • 発疹が強い場合、肝臓庇護剤(強力ネオミノファーゲンシー)を点滴注射
  • 重症例(発疹が長時間断続的に次から次に出現する)場合  ステロイド剤
  • 血管浮腫  トラキネサム酸を使用(キニンの産生を抑制)
  • 血圧低下などのショック症状  緊急的にアドレナリンの注射
  • 呼吸困難の合併時  気管挿管などの気道確保

慢性期(Chronic Phase)

  • 抗ヒスタミン薬(H1 blocker)・抗アレルギー薬を使用するのが一般的
  • 抗ヒスタミン製剤のレスタミン軟膏・ステロイド外用剤
  • 漢方薬  柴胡加龍骨牡蠣湯・酸棗仁湯・十味敗毒湯
  • 胃酸抑制剤  H2ブロッカーが、抗ヒスタミン作用にも働き効果があることがある
  • 降圧剤レセルピン(アポプロン) 肥満細胞のセロトニンを枯渇させるため
  • 慢性胃炎合併例  ヘリコバクター除菌療法
  • 慢性扁桃炎合併例  扁桃摘手術

じんましん治療と扁桃摘手術
慢性扁桃炎合併例では扁桃摘手術を施行するとじんましんが治癒することがあります。掌蹠膿疱症も同様の治療が行われ、同じ作用機序が考えられています。

かゆみを早く抑えることで、心理的なストレスもやわらぎますし、掻き壊してしまうのを避けることができます。実際に掻き壊して化膿してしまった場合には、抗生物質の内服・外用も検討します

ステロイド外用剤を使用するときは、1週間以上使わない、決められた使用範囲を超えて塗らないというルールを守ることが大切です。またステロイド外用剤を用いて3〜4日たっても発疹が消えないときは、じんましんでないかもしれません。また他の病気を併発していたりすることも多いので、医師に相談することをお勧めします

 

抗ヒスタミンの選択方法

じんましんになった時、原因物質のヒスタミンを抑える薬である抗ヒスタミン薬を服用します。抗ヒスタミン薬には多数の種類があります。

  • 副作用の度合  眠くなるもの・眠くなりにくい
  • 服用回数    1日1回服用 1日2回以上服用
  • 服用方法    錠剤・口腔内崩壊錠(水なしでものめる)・ドライシロップ(小児に適する)

抗ヒスタミンの副作用
抗ヒスタミン薬をのむと眠気が発現したり、注意力や集中力が散漫になることがあります。 自動車運転などの機械操作をする方や受験生など眠気があっては困る方はあらかじめ医師・薬剤師にご相談ください。抗ヒスタミン薬の効果には個人差がありますので、医師の診察を受けて自分に合った薬を処方してもらいましょう。

抗ヒスタミンの服用方法
抗ヒスタミン薬をのんで症状が消えても一定期間のみましょう。急性じんましんでは数日から1週間程度、1〜2ヵ月続いた慢性じんましんでは1ヵ月、それ以上の慢性じんましんでは2ヵ月が目安です。自分の判断で薬をのむのを止めずに、医師に相談しましょう。薬を飲むと大部分の人は数日で症状が治まりますが、担当医の指示がある間は飲み続け、徐々に減らしていくことが大切です。

 

 

 3.生活習慣の改善

 

  • 過労やストレスを避ける
  • 規則正しい生活・十分な睡眠
  • バランスのよい食事
  • 血行をよくする行動を慎む  飲酒・激しい運動・熱い湯に入る
  • 皮膚への刺激を減らす 摩擦・圧迫・振動などの刺激を予防

 

|じんましんの予防

 

じんましんの原因が分かっている場合は、それを避けることが一番の予防です。食物や薬剤が原因の場合、その内容を記憶・記録しておきましょう。可能性があるものはアレルゲンとして血液検査で確認できます。

特定の刺激により症状が現れるじんましん

  • 特定の刺激を避ける
  • 服の刺激が原因と考えられる場合は、木綿製などの生地が柔らかくゆったりした服装する
  • 汗が原因と考えられる場合は、激しい運動は控え、発汗を促すような刺激物の摂取は避ける
  • (人により入浴で症状が改善されることもあります)

自発的に症状が現れるじんましん

  • 生活上のストレス、疲労を貯めない
  • 過度の飲酒を避ける(血行が良くなり症状が増悪・肝臓にも負担大)
  • 悪化因子となる食品や薬剤に注意
  • 感染症(かぜなど)に気をつける

じんましんになってしまったら
じんましんになった時は、できるだけ静かに過ごし、じんましんのできているところを冷たいタオルなどで冷やしたり(寒冷じんましんの場合は避けます)、摩擦や圧迫、振動などの刺激を与えないようにしたりしましょう。血行がよくなると、じんましんが悪化しやすくなります。

じんましん かきむしるのは良くないこと?
じんましんは強いかゆみを伴います。掻くと一次的にかゆみは軽減しますが、それによりじんましんの範囲が広がりかゆみが増悪します。皮ふを傷つけたり新たに湿疹を生じることもあります。小児の患者様ですと皮膚感染を併発し伝染性膿痂疹(とびひ)になることも多く見られます。かゆいときは冷やすなどの処置も有効です。

田島クリニック

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