横浜・馬車道の総合診療クリニック

高尿酸血症・痛風

|高尿酸血症とは?

 

 ヒトの体のなかの細胞には、すべて遺伝子が入っています。この遺伝子であるDNAの合成に核酸(かくさん)が必要です。その核酸(かくさん)という物質のなかに含まれるプリン体の分解産物が尿酸です。

 

尿酸の約80%は腎臓から尿中に溶けた状態で排泄されます。この排泄量が少なかったり、体のなかで尿酸がつくられすぎて排泄が間に合わなかったり、あるいはその両方が起こると血液中に尿酸が増えてきます。
このようにプリン体の 産生が過剰になる または 排泄が低下する と血液中の尿酸が正常値を超えて高くなり高尿酸血症となります。

 

|痛風とは?

 

 高尿酸血症の状態では、尿酸は尿酸塩(にょうさんえん)という結晶(クリスタル)の形となって、関節や腎臓などに析出してくるようになります。尿酸塩が関節に沈着することによって急性の関節炎を起こす病気が痛風です。

 

 

院長の独り言  血中内の濃度が高く、溶けきれない尿酸がクリスタルとなって現れ、それが関節に溜まってしまうというメカニズムですね。ビーカーに食塩を溶かして、ある濃度を超えるとビーカーの底に食塩が溜まってくるのとおなじ理屈ですね。

40-50代の男性に多く95%以上は男性です。なんとその数10年間で約2倍に!
女性は男性に比べて極めて少なく、発症する場合はほとんどが閉経期以降です。女性ホルモンのひとつであるエストロゲンには、腎臓での尿酸の排泄を促進するはたらきがありますが、閉経期以降、このホルモンの分泌が低下するので、血液中に尿酸がたまる傾向になるためと考えられています。

高尿酸血症の原因と分類

高尿酸血症は以下のように原因により分類されます

 

|病態による分類

 

1.尿酸の産生過剰:体のなかでの尿酸の産生が増加する  20%

肥満・高プリン食・先天性代謝異常・血液腫瘍・溶血性貧血

 

2.尿酸の排泄低下:腎臓からの尿酸の排泄が減少する   60%

慢性腎不全・高乳酸血症・ 1型糖尿病・ 妊娠高血圧症・利尿剤

 

3.混合型:1と2の混ざったタイプ    20%

 

|原因による分類

 

原発性(一次性)  主に生活習慣が原因 (過食・肥満・運動不足・プリン体を過剰摂取)

過食・高カロリー食・肥満・アルコールや果物類(果糖)の過剰摂取・ストレス・過度の運動は尿酸の産生量を増やします。

 

続発性(二次性)  別の病気や薬剤などによって二次的に高尿酸血症となる

腎不全・白血病・骨髄腫・先天性尿酸代謝異常・利尿菜やアスピリンの服用

 

先天性代謝異常   遺伝子異常により核酸代謝が阻害されます
HGPRT欠損症(レッシュ・ナイハン症候群)
APRT(アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)欠損症

高尿酸血症・痛風の診断

性別・年齢を問わず血清尿酸値が7.0mg/dlを超えると高尿酸血症と診断されます。

 

<高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン> 日本痛風・核酸代謝学会

尿酸 正常値 4.0 - 7.0 mg/dl

 

痛風の診断   高尿酸血症 + 痛風の症状

痛風関節炎の発作・痛風結節などの症状・血清尿酸値・関節液などにより診断

 

血液に溶けきらなかった尿酸は結晶(クリスタル)になって関節に沈着し急性関節炎(痛風)を引き起こします。

 

 

院長の独り言   血清尿酸値が7.0mg/dlを超え、高値であるほど痛風関節炎の発症リスクが高まると報告されています。同時にメタボリックシンドローム(肥満・脂質異常症・糖尿病・高血圧症など)の頻度が高くなります。メタボリックシンドロームは、動脈硬化疾患の発症に関与しているので、注意が必要です。


高尿酸血症・痛風は動脈硬化のリスクファクターのひとつです。脳動脈や冠動脈に作用して結果的に脳血管障害、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)を招くことになります。
脂質異常症や糖尿病、肥満、高血圧などを合併することも多くメタボリックシンドロームのひとつとされています。

高尿酸血症・痛風の症状

|高尿酸血症の症状

 

高尿酸血症(尿酸値7.0mg/dl以上) の状態だけでは必ずしも症状は出現しません。しかし尿酸値に比例して痛風発作が起こる可能性が高くなります。

 

|痛風の症状

 

アルコール・ストレス・脱水などで痛風発作が生じる場合があります。足の関節に炎症(腫脹・発赤・疼痛・熱感)が起こります。約24時間でピークに達し、1-2週間で徐々に痛みは消失して行きます。私の臨床経験を基にしますと

第1趾外側(中足趾関節)  85 - 90%
足の甲・くるぶし・アキレス腱 5 - 10%   
膝       5%
肘      まれに

やはり痛風発作発症No.1は足の親指側の中足趾関節です。初発で50%、2回目以降で90%がそ同部位にに発症するといわれています。他の部位も同様で患者様の多くは同じ部位に発作を繰り返す傾向にあります。

 

 

院長の独り言  ほとんど足周辺に起こります。比較的急激に発症し真っ赤に腫れあがり、患者様は歩行困難になりクリニックを受診されます。つまり<風が当たっても痛い>ので<痛風>といいます。私の経験上、急激に脱水になる夏季に受診者数は増えるかなという印象を持っています。


 

|高尿酸血症の合併症
高尿酸血症を放置しておくと色々な合併症が発症してきます

痛風結節

関節の周囲などに尿酸塩の結晶が析出して、こぶのように腫れてきます。足の親指(中足趾関節)・足の関節・耳の軟骨・腱・皮下など

尿酸結石

尿酸塩による尿路結石ができやすくなります。結石が尿管につまり腰背部に激烈な痛みを引き起こします。

腎障害

尿酸塩が腎臓髄質に溜まると尿細管への尿酸の沈着を引き起こします。この状態を痛風腎と呼びます。間質性腎炎の形態をとり腎機能障害を起こし進行すると腎不全を引き起こします。
尿酸は酸性尿で析出しやすいとされています。尿pH6 - 7が尿酸が最も析出しにくいので高尿酸血症の治療において尿pH は6 - 7 に保つことが適切とされています。

動脈硬化症

尿酸は抗酸化物質であると同時に炎症を引き起こす物質でもあります。血管では、尿酸により炎症が起こり、血管平滑筋細胞を中心とした動脈硬化が進み、心血管イベントを引き起こすと考えられています。

高血圧

高尿酸血症は動脈硬化を招き高血圧も合併しやすいです。メタボリックシンドロームの一つですね。

高血圧の患者様が高尿酸血症を合併症とする率は男性34.1%、女性16.0%で認められ、約90%は排泄低下型の高尿酸血症であった(尿酸値の閾値を男性で7.0mg/dL以上、女性で6.2mg/dL以上)との報告もあります

高尿酸血症・痛風の検査

|高尿酸血症の検査

 

一般的には尿酸値の測定を血液検査にて行います。病型分類のため尿中の尿酸値を測定することもあります。血清尿酸値 7.0mg/dl以上が高尿酸血症の診断基準となります。女性では6.2mg/dlを心血管リスク増大の観点から採用する場合もあります。

 

|合併症の検査

 

悪性腫瘍のチェック

悪性腫瘍が原因で高尿酸血症となっているかをチェックします(白血病など)

 

腎機能検査

痛風腎による腎機能障害のレベルをチェックします(BUN・クレアチニン・GFRなど)

 

尿路結石の確認

X線検査・CT検査・腹部超音波検査などで結石の存在を確認します

 

メタボリックシンドロームのチェック

高血圧・脂質異常症・糖尿病・肥満などをチェックします

 

虚血性心疾患のチェック

心電図・心臓エコーなど

 

脳血管のチェック

頭部MRIで脳動脈の硬化や狭窄の状態をチェックします

 

鑑別診断:痛風と類似した病気としては

 

  • 関節リウマチ
  • 変形性関節症
  • 偽痛風
  • 外反母趾

 

などがあります。それらと区別するため、それぞれの検査も行います。

高尿酸血症・痛風の治療

高尿酸血症・痛風の治療は尿酸を正常化し痛風関節炎の発現や合併症を予防することにあります。他のメタボリックと同様治療には以下の4つの方法があります。

生活療法 ・ 運動療法 ・ 食事療法 ・ 薬物療法

|生活療法
高尿酸血症の原因の多くは生活習慣なので、その改善が第一です。食事・嗜好品などの生活習慣の改善も大切です。

 

規則正しい生活・一日3回の食事

過食を控える

肥満の改善

定期的に有酸素運動を行う

 

  • 患者様自身の総エネルギーを知りましょう
  • 栄養素バランスを適正化しましょう
  • 日常の生活強度に合った食事をしましょう

 

総エネルギー量算出方法

 

総エネルギー量 (kcal) = 標準体重 (kg) × 生活活動強度指数(kcal)

 

標準体重算出方法

 

標準体重 = 身長(m) × 身長(m) × 22

 

生活活動強度指数(kcal)
  • 軽労働(主婦・デスクワーク):25 - 30 kcal
  • 中労働(製造・販売業・飲食店):30 - 35 kcal
  • 重労働(建築業・農業・漁業):35 - 40 kcal

<例> 身長 170 cm 男性 事務職のA氏 の場合

 

標準体重 = 1.7 × 1.7 × 22 = 63.58 Kg
総エネルギー量 63.58 Kg × 30 Kcal = 1907.4 Kcal

 

食事の単位計算 : 1単位 = 80 kcal (ご飯 1/2杯 (50g) 1単位)
上記のデスクワークの多い成人男性では、1500kcal〜1600kcal(約20単位)ということになります。

  • 日本における平均身長でのBMI基礎代謝量 男子 1450 kcal 女子 1210 kcal
  • 軽労働(主婦・デスクワーク)男子 1630-1950 kcal 女子 1390-1670 kcal
  • 中労働(製造・販売業・飲食店)男子 1950-2280 kcal 女子 167 -1950 kcal
  • 重労働(建築業・農業・漁業)男子 2280-2600 kcal 女子: 1950-2230 kcal

<日本の平均身長  男性 171.65 cm 女性 158.60 cm>

 

|運動療法
 運動療法は、全身を動かして大量の酸素を取り込み脂肪を燃焼させる有酸素運動を無理なく続けることが効果的です。毎日、もしくは1日おきに1時間、あるいは週5から6日30分間行ってみましょう。ただし過剰な運動は急激な脱水を招き、痛風発作を出やすくさせますのでご留意ください。

有酸素運動   ウォーキング ・ サイクリング ・ スイミング ・ 水中ウォーキング
         ジョギング ・ エアロビクス ・ なわとび 等

 

|食事療法
食事療法のポイントを下記に示します。今日からでも取り組んでみましょう。

肥満傾向の人は減量し標準体重にしましょう

 現在の身長・体重より上記の公式から標準体重・一日カロリー量を算出してみてください。
肥満経口の方は過食に注意し標準体重を目標に減量してみましょう。ただしあまり急激な減量は、血清尿酸値の上昇につながるので注意が必要です。

プリン体を多く含む食品の摂取は控えましょう

肉や魚の内臓類に多く含まれるプリン体は体内で尿酸に代謝され、尿酸は尿中に排泄されます。尿酸が増えると血液中に蓄積されることから、プリン体を多く含む食品の摂取は控えましょう。またプリン体は、水に溶けるので肉や魚からとったスープ(鶏がらスープなど)にも注意が必要です。

 

プリン体の多い食品と少ない食品(単位 mg/100g)
極めて多い (300mg〜)

鶏レバー・マイワシ干物・イサキ白子・あんこう肝酒蒸し

多い (200〜300mg)

豚レバー・牛レバー・カツオ・マイワシ・大正エビ・マアジ干物・さんま干物

少ない (50〜100mg)

ウナギ・ワカサギ・豚ロース・豚バラ・牛肩ロース・牛タン・マトン・ボンレスハム・プレスハム・ベーコン・ツミレ・ほうれん草・カリフラワー

極めて少ない (〜50mg)

コンビーフ・魚肉ソーセージ・かまぼこ・焼きちくわ・さつま揚げ・カズノコ・スジコ・ウインナソーセージ・豆腐・牛乳・チーズ・バター・鶏卵・とうもろこし・ジャガイモ・さつまいも・米飯・パン・うどん・そば・果物・キャベツ・トマト・にんじん・大根・白菜・海藻類

 

 

院長のひとりごと  確かに治療にはプリン体は避けなければいけませんが、残念ながら美味しいものにプリン体はたくさん含まれています。それを横目に毎日過ごすのはつらいですね...居酒屋でビールと焼き鳥、日本のお父さんの憧憬です。

 

水分を十分にとりましょう・脱水に気を付けて!

尿酸の腎臓への沈着や、尿路結石の発症を予防するためには尿量を増加させることが必要です。そのため飲水量を増やし、1日尿量を通常の約2倍の2000ml以上に保つようにしなければなりません。
尿量が増加すると尿酸の排泄量が増加します。水分を十分に摂取しましょう。水分は、できるだけ普通の水・お茶・ウーロン茶などで摂り、炭酸飲料やジュースなどの糖分の多い飲み物は、エネルギーが高いので避けましょう。

 

 

院長のひとりごと  脱水になり尿管が狭まり結石が尿管に詰まる...高尿酸血症の治療では水分を必要としますが、逆に高血圧・糖尿病ではどちらかと言えば水分制限が必要です。メタボリックシンドロームのなかでも、この点が矛盾した治療法になりますので難しいところですね。弊院では高血圧・脂質異常症・糖尿病・高尿酸血症が併存した場合、重症度により治療の優先順位を決めることにしております。

 

野菜を十分にとりましょう

尿酸はアルカリ性〜中性によく溶けるので、野菜・いも類・海藻類などのアルカリ性食品を十分に摂り、尿をアルカリ性に保つことが必要です。新鮮な野菜の摂取は、水分補給にも役立ちます。
ただし、果物は果糖が多いので、摂りすぎないようにしましょう。

アルコールは控えましょう

アルコール飲料はアルコール自体の代謝に関連して血清尿酸値を上昇させるので控えましょう。アルコール飲料の中では、特にビールはプリン体を多く含むので、避けましょう。

一日3食規則正しくとり栄養のバランスを考えましょう

毎食、主食・主菜・副菜を組み合わせて摂るようにしましょう。

食塩の多い食品は控えましょう(減 塩)

痛風や高尿酸血症には、肥満・高血圧・脂質異常症・耐糖能(たいとうのう)障害(糖尿病)が高い確率で合併します。脳血管障害、心臓病などの合併症を防ぐために、塩分や脂肪分を制限することも必要です。

 

 

院長のひとりごとつまりメタボリックシンドロームの治療は共通しているということですね

 

|薬物療法
高尿酸血症・痛風治療薬はその役割で以下の3つに分類されます。

  1. 尿酸をコントロールする薬
  2. 尿酸結石の予防・治療薬
  3. 痛風発作の予防・治療薬

 

|| 尿酸値をコントロールする薬剤

 

2010年のガイドライン改定により、無症状であっても合併症がある場合
血清尿酸値7.0mg/dL 以上は薬物療法の適応となります。

 

尿酸合成阻害薬  尿酸産生亢進型の患者様
商品名 ザイロリック・アロシトール(アロプリノール)
フェブリク(フェブキソスタット)・トピロリック・ウリアデック(トピロキソスタット)

 

尿酸排泄促進薬  尿酸排泄低下型の患者様
商品名   ユリノーム(ベンズブロマロン)・ベネシッド(プロベネシド)

 

尿路結石の既往・腎機能障害のある患者様には、尿酸排泄促進薬で合併症を悪化させる危険性があります。この場合尿酸生成抑制薬を服用し、尿中尿酸排泄量を抑制しなければなりません

 

|| 尿酸結石の予防・治療薬  尿中pH 6-7 を目標に

 

高尿酸血症は尿酸結石のリスクでもあり、尿中pHが5以下の患者様は結石ができやすいとされています。痛風の患者さんの尿は酸性度が強いため、尿をアルカリ化する食品である野菜や海藻などを多くとるようにします。

 

尿をアルカリ化する薬剤
商品名 ウラリット(クエン酸ナトリウム・クエン酸カリウム製剤)

 

|| 痛風発作の治療薬

 

痛風発作急性期または発作の予感がする時
商品名  コルヒチン(Colochicine)
痛み止めとして非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を短期間に比較的大量に服用します。副腎皮質ステロイド薬も十分な効果を発揮する薬物です。

田島クリニック

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